防水性ナンバーワンを誇るFRP防水は、ひび割れや劣化に強く、防水工法の中では一番頑丈と言われています。
ガラス繊維やプラスチック繊維をFRP樹脂で挟んだFRP防水は、車の重量にも耐えられる頑丈な防水工法のため、水漏れが許されない貯水槽やプール、浴室だけでなく、屋外駐車場の防水工事にも用いられます。
ただし、FRP防水の施工単価は丈夫で長持ちする分、ウレタン防水やシート防水に比べると少し割高になります。
雨水の侵入を防ぐ防水工事は、建物を長持ちさせるための重要な工事です。建物によって向き不向きはありますが、屋根やベランダ、バルコニーの雨漏りにお悩みの方は、ひび割れや劣化に強いFRP防水をぜひ検討してみてください。
FRP防水とは 一番丈夫な防水工法
屋根・屋上の防水工事にはいくつかの種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットがあります。
防水工事といえば、液体のウレタン樹脂を塗布するウレタン防水や、シートで防水層を作るシート防水が一般的ですが、FRP防水はガラス繊維を下地に使い、その上にポリエステル樹脂を塗布して硬化させる工法です。
ガラス繊維や樹脂を使ったFRP防水は、他の防水工法に比べて頑丈ですが、その分価格が高くなります。
樹脂だけでなく強靭なFRP繊維を組み合わせて屋根上を覆うため、軽量でありながら衝撃に強く、長期間の摩耗にも耐えるので、しっかりした防水層を構築することができます。
また、FRPはお風呂の浴槽やボートの船体に使われるほどの耐久性と防水性を持ち、防水工法の中では一番頑丈と言われています。大量の水に触れる用途でも問題ないほど、FRP防水は丈夫で水漏れが発生しない工法と言えるでしょう。
樹脂を塗料のように塗布するので、凹凸のある場所にも対応し、すぐ硬化するため短期間の施行が可能です。一般的な防水塗料の仕上げに似ていますが、FRP防水のほうがはるかに丈夫で、長期間の防水効果があります。
FRPは樹脂と繊維の複合材
FRPとは、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)の略称で、ベースの繊維と樹脂を複合させて、単体のプラスチックだけでは実現できない強度と耐久性を持たせた素材です。
ベースの繊維にはガラス繊維が用いられますが、さらに強度が必要な場合は、炭素繊維を用いることもあります。その上から塗布する樹脂には、ポリエステル系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系などの熱硬化性樹脂が用いられます。
FRP防水を施工する際は、樹脂に硬化剤を混ぜて発熱させながら作業を進めていきます。樹脂に硬化剤を混ぜてしばらくすると固まるので、一度に塗布できる量は限られています。そのため、小分けに作業するのが一般的です。
FRPは錆や腐食などによる劣化がない
住宅に使われる素材は木材や金属が一般的ですが、長年使用していると木材は腐食し、金属は錆が発生します。FRPは樹脂とガラス繊維の複合材なので、基本的に劣化や腐食はほとんどありません。
FRP防水に使われる樹脂は太陽光による紫外線で劣化しますが、それを防ぐためにトップコートという塗料を10年ごとに塗り替えてメンテナンスを行います。適切なメンテナンスを行えば、FRP防水は25年~30年程度は持ちます。
FRPは重量物に耐えられる強度がある
FRP防水はガラス繊維を下地に使い、その上に樹脂を塗布して硬化させる工法です。樹脂と強靭な繊維を組み合わせて屋根上を覆うため、軽量でありながら衝撃に強く、長期間の摩耗にも耐えるので、しっかりした防水層を構築することができます。
FRP防水は重量物にも耐えられる頑丈な防水工法のため、自動車の走行や駐車で重量がかかる立体駐車場や屋外駐車場の防水工事にも用いられます。スーパーやショッピングセンターの屋上に駐車場がある場合は、ほとんどがFRP防水です。
また、水漏れが許されない貯水槽やプール、浴室にも使われます。
雨漏りは建物の寿命を縮める 防水工事の必要性
建物の雨漏りは、ほとんどが屋根や屋上で発生します。建物の外装が外壁塗装で定期的なメンテナンスを行うのと同様に、屋根や屋上も防水工事による定期的なメンテナンスが必要です。
ビル・マンションの屋上や、住宅の屋根・バルコニー・ベランダは、常に雨風にさらされています。
防水がしっかりしているうちは大丈夫ですが、防水部分の経年劣化が進むと、建物内に雨水が侵入してカビが発生したり、鉄筋やコンクリートが劣化して、住宅やビルの寿命を縮める大きな原因となります。
住宅で一般的に見られる切妻屋根や寄棟屋根、日本家屋の瓦屋根でおなじみの入母屋屋根には、屋根の傾斜によって自然に雨水が落下するようになっています。
しかし、ビルやマンションの屋上は、水平の陸屋根構造がほとんどで、住宅のバルコニーやベランダもほぼ水平の構造になっています。そのため、雨水が溜まりやすく、防水部分が劣化すると雨漏りが発生します。
![]() ベランダFRP防水のトップコートが劣化や摩耗している。トップコートの塗り替えがお勧めです。 |
![]() 地震などの揺れで下地からひび割れしている。放置しておくと雨漏りの原因になってしまうので下地から補修が必要です。 |
建物内に雨水が侵入すると、住宅では天井や壁にシミができたり、クロスが剥がれてきたり、押入れや壁内にカビが発生します。木造住宅の場合は構造材や仕上げ材の腐食につながるため、あっという間に建物が劣化します。
ビルやマンションの場合はさらに深刻で、コンクリートに水が侵入するとひび割れが発生するだけでなく、内部の鉄筋にサビが生じて構造体の強度が低下したり、電気設備の漏電や火災の原因になります。
防水工事を怠って雨漏りが発生すると、建物内部に大きな被害が発生します。特に平坦な陸屋根では雨漏りを防ぐため、防水工事による定期的なメンテナンスが重要になります。
FRP防水の施工
FRP防水の施工は、まずガラス繊維を屋根やベランダ、バルコニーに敷き詰めて、その上に熱で硬化する樹脂を塗布していきます。シート防水のように継ぎ目ができないので、丈夫な防水層を作ることができます。
FRP防水のメンテナンス方法
- トップコートの塗り替えの場合
- FRP防水層も含めた場合
- 下地から補修から行う場合
下記の工程は、下地補修から行う工事例です。
1.既存の防水層の撤去
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既存ベランダはシート防水です。下地まで劣化が進んでいるため下地補修から行います。 | 既存のシートを剥がします。 | 傷んだ下地も撤去します。 |
2.新しい下地の設置
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新しい下地を木材で設置します。 | 下地完成です。この上に防水層を作ります。 | 樹脂を定着させるプライマーを塗布します。 |
3.防水層の施工
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ベランダのサイズに合わせてガラスマットをカットします。ガラス繊維は簡単に折り曲げたり、切断して加工することができるので、複雑な形状の屋根やベランダ、バルコニーに密着させることができます。 | ガラス繊維を敷き詰めたら、続いてポリエステル樹脂を塗布していきます。 | 立上り部分も同様に防水層をつくります。 |
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ガラスマット貼り付け後です。FRP防水は一層でも十分な防水性があります。さらに強度が必要な場合は、上にもう一度ガラス繊維を敷いて樹脂を塗布します。 | ケレンしてガラスマットの凹凸を平らにします。 | アセトンで油分をきれいに拭き取ります。 |
4.トップッコート塗布・FRP防水工事完了
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アセトンで油分をきれいに拭き取ります。 | トップッコートを塗布します。FRP防水層は水には強いのですが、紫外線には弱いので、保護する役割でトップコートが必要です。 | FRP防水工事完了です。 |
FRP防水の価格
FRP防水の施工価格は、ウレタン防水やシート防水より丈夫な分、平米あたりの単価が高くなります。
ガラス繊維や樹脂は一般的な防水塗料よりも高く、手間や工数が増えるので、どうしても価格が上がります。屋上の駐車場や屋上緑化向けに防水層を二層や三層に増やすと、その分だけ単価が上がります。
また、およそ10年ごとに防水層を守るメンテナンスとして、トップコートの塗り替えが必要になります。
しかし、FRP防水は耐久性が高く、雨漏りはほとんど発生しません。また、ウレタン防水やシート防水よりも長持ちするので、1年あたりの単価や補修費用も含めて考えると、それほど高いとは言えません。
FRP防水費用
種類 | 価格(税込) |
---|---|
防水層も含めた場合 | 4,400~8,800円/㎡ |
トップコートのみの場合 | 2,750~5,500円/㎡ |
外壁塗装と防水工事の違い
外壁塗装で利用する塗料と、防水工事に使う塗料は全くの別物です。一見似たようなイメージがあるので、同じ感覚で外壁塗装専門の業者に防水工事を依頼すると、施工不良や早期の経年劣化によって雨漏りが発生する可能性があります。
屋根や屋上、ベランダ、バルコニーなどの防水工事やメンテナンスは、場所によってそれぞれ使用する塗料や工法を変える必要があります。屋根の防水工事は、塗装専門の業者ではなく、正しい知識を持つ防水工事の業者に依頼してください。
防水工事 その他の工法
屋根の防水工事で一般的に使われる工法としては、FRP防水の他に、シートで防水層を作るシート防水、ウレタン樹脂を塗布するウレタン防水があります。各工法ごとにそれぞれ特徴があり、屋根の形状や用途、価格に応じて使い分けます。
シート防水
シート防水は柔軟性のあるゴムシートや塩ビシートを貼り付けて防水層を作る工法です。
シートを貼り付けるだけで仕上げができるため、短期間の工期にも対応し、コストを低く抑えることができます。太陽光の熱や紫外線にも強く、下地のコンクリートにもよく適応します。
接着剤による接着工法だけでなく、固定金具やアンカーを用いた機械的固定工法によって、下地にしっかりと固着する防水層を作ることもできます。
ウレタン防水
液状のウレタン樹脂を塗布し、下地の凹凸や形状に左右されない防水層を作る工法です。
ウレタン樹脂は塗料のような液体なので、ペンキのように刷毛やローラーで施工することができます。大掛かりな作業や工法を必要とせず、低コストで均一な防水層を形成することができます。
劣化してもすぐに塗り直しが可能で、すばやく補修することができます。下地の状態や形状に左右されず、複雑な場所でもウレタン樹脂を塗るだけで施工できるので、どんな屋根や屋上でも対応できる工法です。
